ご自宅のリフォームを検討される際、多くの方が「工事期間中はどこで生活すればよいのか」という点でお悩みになるかと思います。仮住まいを用意せずに、いつもの生活を送りながら工事を進める「住みながらリフォーム」は、引っ越しの手間や費用を抑えられるため、非常に人気のある選択肢です。しかし、実際に生活の場が工事現場となることには、メリットだけでなく、事前に知っておくべき注意点も存在します。
インターネット上の情報や一般的な宣伝では、「安くて便利」といった良い面ばかりが強調されることも少なくありません。しかし、私たち岡山県住宅設備協同組合は、お客様に心から満足していただくためには、工事中のストレスや生活環境の変化といった側面もしっかりとお伝えすることが誠実であると考えています。
本記事では、長年岡山で多くのリフォームに携わってきた経験をもとに、住みながら工事を行う際のリアルな実情について解説いたします。費用対効果やストレスのバランス、水回りが使えない期間の対策、そしてプライバシーの確保など、リフォーム業者がなかなか言わない「真実」にも触れていきますので、ぜひ計画の参考にしていただければと思います。
1. 住みながらのリフォームは本当にメリットばかり?費用とストレスのバランスについて
リフォームを計画する際、多くの施主が直面するのが「仮住まいを用意するか、今の家に住みながら工事をするか」という選択です。特にキッチンや浴室、リビングなどの大規模な改修を伴う場合、この判断がリフォーム期間中の生活の質(QOL)を大きく左右します。
一般的に、住みながらリフォーム(居住中工事)を選択する最大の動機は「コストカット」です。仮住まいを借りるための短期賃貸契約にかかる家賃、敷金・礼金、仲介手数料、そして往復の引っ越し費用が不要になります。工事期間が1ヶ月以上に及ぶ場合、これらの費用は数十万円から場合によっては100万円近くになることもあり、予算重視の方にとって「住みながら」の選択は非常に魅力的です。
しかし、現場の実情を知る立場からお伝えしなければならないのは、金銭的メリットの裏にある「精神的な負担」です。リフォーム業者の営業担当者は契約を取るために「住みながらでも問題なく工事できますよ」と前向きに提案することがありますが、実際の生活環境は想像以上に過酷になるケースが少なくありません。
まず覚悟しなければならないのが、騒音と振動です。特に解体工事の段階では、電動工具の轟音やハンマーの打撃音が響き渡り、隣の人との会話もままならない状態になります。近年定着した在宅勤務(テレワーク)を行っている方や、昼寝が必要な乳幼児がいる家庭にとっては、日中の生活が著しく制限されることになります。
次に、粉塵(ほこり)の問題です。プロの職人がどれほど丁寧に養生を行っても、解体や木工事で発生する微細な粉塵は隙間を通って生活スペースに侵入します。毎日工事が終わった後にリビングに掃除機をかけ、家具を拭く作業が日課になることは珍しくありません。喘息やアレルギーを持つ家族がいる場合は、健康面への影響も慎重に考慮する必要があります。
さらに見落としがちなのが、工期の延長と隠れたコストです。空き家状態であれば複数の職人が一斉に入って効率よく進められる作業も、住人がいる場合は生活動線を確保するために、荷物を移動させながら部屋ごとに区切って工事を行う必要があります。効率が落ちる分、工期が1.5倍ほどに延びることもあり、その分の職人の人件費や養生費、現場管理費が見積もりに上乗せされている可能性があります。また、キッチンや風呂が使えない期間の外食費や銭湯代がかさみ、結果的に節約効果が薄れてしまうこともあります。
結論として、住みながらのリフォームは「仮住まい費用ゼロ」という明確なメリットと、「騒音・埃・プライバシーの欠如・工期延長」というストレスのバランスを冷静に見極める必要があります。トイレや洗面台の交換、一部屋だけのクロス張り替えといった部分的なリフォームであれば住みながらでも十分可能ですが、間取り変更を伴うフルリノベーションや、水回りを全て一新するような工事の場合は、仮住まいを手配した方が精神衛生上も良く、結果的に工事の品質も安定する傾向にあります。
2. 工事中の騒音やホコリはどの程度?在宅工事で想定される生活環境の変化
住みながらのリフォーム(在宅工事)を選択する場合、引っ越し費用や仮住まいの家賃を浮かせることができる点は大きなメリットです。しかし、契約前の打ち合わせで担当者が「養生もしっかりしますし、普段通り生活できますよ」と言ったとしても、その言葉を額面通りに受け取るのは危険です。実際に工事が始まると、想像以上の生活環境の悪化に直面し、「ここまで大変だとは思わなかった」と後悔する施主様も少なくありません。ここでは、業者が積極的には語りたがらない騒音やホコリのリアルな実情について解説します。
まず覚悟しなければならないのが「騒音と振動」です。これは単に「音がうるさい」というレベルではありません。特に解体作業、床の張り替え、壁の撤去などを伴う工事では、電動ノコギリの切断音やインパクトドライバーの打撃音、ハンマーで壁を壊す音がダイレクトに響き渡ります。工事箇所と居住スペースが壁一枚、あるいは養生シート一枚でしか隔てられていないため、テレビの音は聞こえなくなり、家族間の会話も大声を出さなければ聞こえない状況になります。近年定着した在宅勤務(テレワーク)やオンライン会議は、ノイズキャンセリング機能を使ってもマイクが音を拾ってしまうため、実施はほぼ不可能だと考えてください。また、大きな音に敏感なペットや、お昼寝が必要な乳幼児がいるご家庭では、日中は外出して避難するなどの対策が必須となります。
次に厄介なのが「ホコリ(粉塵)」の問題です。プロの職人はマスカーテープやブルーシートを使って施工エリアを密閉し、居住スペースへの飛散を防ごうと努力します。しかし、リフォーム工事、特に石膏ボードの切断やクロスの剥がし作業で発生する粉塵は、小麦粉よりも粒子が細かく、目に見えないわずかな隙間から家中に拡散します。工事期間中は、毎日掃除機をかけても床がなんとなくザラザラしたり、棚の上にうっすらと白い粉が積もったりすることが避けられません。ハウスダストや喘息などのアレルギーをお持ちのご家族がいる場合は、高性能な空気清浄機を常時稼働させるか、工事期間中だけでもウィークリーマンションを利用するなど、健康被害を防ぐための自衛策が必要です。
さらに、物理的な環境変化に加えて「知らない人が一日中家にいる」という精神的なストレスも見逃せません。朝の8時半頃から夕方17時過ぎまで、複数の職人さんが家の中を出入りします。貴重品の管理に気を配る必要があるほか、リラックスできる服装でくつろげない、トイレに行くタイミングに気を使うなど、自宅にいながら心休まらない日々が続きます。
結論として、住みながらのリフォームにおいて「普段通りの生活」を維持することは困難です。経済的なメリットと引き換えに、一定期間の不便とストレスを受け入れる覚悟が必要です。もし在宅工事を選択する場合は、日中は図書館やカフェ、実家などで過ごす時間を増やし、工事現場となる自宅から物理的に距離を置く時間を作ることを強くおすすめします。
3. 水回りが使えない期間はどう過ごす?キッチンや浴室リフォーム時の具体的な対策
住みながらのリフォームにおいて、最大のストレス要因となるのが「水回りが使えない期間」です。リビングや寝室の工事であれば家具を移動させるだけで済みますが、キッチンや浴室、トイレといったライフラインに関わる設備は、工事期間中の代替手段を確保しなければ生活が成り立ちません。業者は工期短縮に努めますが、それでも数日から1週間程度は不便な生活を強いられるのが現実です。ここでは、各場所ごとの具体的な停止期間の目安と、ストレスを最小限に抑えるための対策を紹介します。
キッチンのリフォーム期間と食事対策**
システムキッチンの交換だけであれば2日から4日程度、レイアウト変更や床の張り替えを伴う場合は1週間以上キッチンが使えなくなります。この期間、最も困るのは「調理」と「洗い物」です。
* カセットコンロと電子レンジの活用
IHやガスコンロが撤去されても、カセットコンロがあれば簡単な調理は可能です。また、事前に作り置きをして冷凍しておき、電子レンジで温めるだけの状態にしておくと食費も節約できます。
* 使い捨て食器の導入
流し台(シンク)が使えないと、食器を洗う場所がありません。洗面所や浴室で洗うのは衛生面や手間の観点から現実的ではないため、割り箸、紙皿、紙コップを使用することを強く推奨します。ゴミは増えますが、家事負担は劇的に減ります。
* 外食・中食・デリバリーの計画的利用
工事期間中はホコリや騒音で気が休まらないことも多いため、無理に自炊せず、外食やスーパーの惣菜(中食)、デリバリーサービスを積極的に利用するのも一つの手です。
* 冷蔵庫の移動場所
工事範囲によっては冷蔵庫をリビングなどに移動させる必要があります。延長コードを用意し、工事の邪魔にならず、かつ家族がアクセスしやすい場所を事前に確保しておきましょう。
浴室(お風呂)のリフォーム期間と入浴対策**
ユニットバスからユニットバスへの交換で3日から4日、在来工法(タイル張りなど)からの変更やサイズ変更を伴う場合は1週間前後お風呂に入れない期間が発生します。
* 銭湯や日帰り温泉の利用
近隣の銭湯やスーパー銭湯、日帰り温泉施設をリストアップしておきましょう。家族で「銭湯巡り」としてイベント化してしまうのがおすすめです。回数券を購入しておくと費用を抑えられます。
* スポーツジムやネットカフェのシャワー
普段からスポーツジムに通っている場合は、ジムのシャワーを利用するのが最も手軽です。また、どうしても近隣に入浴施設がない場合、シャワー完備のインターネットカフェを利用するという手段もあります。
* 洗面所での洗髪
洗面所が使える状態であれば、洗髪だけ自宅で済ませ、体はホットタオルやボディシートで拭くという方法もあります。特に夏場以外であれば、1日おきに入浴施設へ行き、間の日は自宅で簡易的に済ませることで負担を減らせます。
洗濯機とトイレの対策**
* コインランドリーの活用
洗面所や浴室の工事に伴い、洗濯機が一時的に取り外されることがあります。その場合は近所のコインランドリーを利用しましょう。最近のコインランドリーはスマホで稼働状況を確認できる店舗も増えており、待ち時間を短縮できます。
* トイレの確保
トイレのリフォームは通常1日で便器の設置まで完了することが多いですが、内装工事を含むと数日かかる場合もあります。その間は、業者が用意する仮設トイレを使用するか、近くの公園やコンビニエンスストア(許可を得て利用)、商業施設のトイレを利用することになります。夜間の利用が不安な場合は、介護用のポータブルトイレをレンタルまたは購入して備える家庭もあります。
住みながらのリフォームを成功させる鍵は、これら「使えない期間」のシミュレーションを綿密に行うことです。工事が始まってから慌てるのではなく、事前に家族全員でルールや代替場所を決めておくことで、不便な期間もスムーズに乗り切ることができます。
4. 職人の出入りが気になる方へお伝えしたい、プライバシー確保と防犯のポイント
住みながらのリフォーム工事において、騒音やホコリ以上に施主様の精神的な負担となるのが「職人の出入り」です。見知らぬ他人が自分の生活空間を行き来する状況は、想像以上に気を使うものです。しかし、事前の対策と業者との明確なルール作りを行うことで、その不安やストレスは大きく軽減できます。ここでは、工事中の生活を守るための具体的な対策について解説します。
まず徹底すべきは「生活エリア」と「工事エリア」の物理的な分離です。リフォーム業者には、単に床を養生するだけでなく、工事箇所以外への視線を遮るための間仕切りや養生カーテン、ファスナー付きの養生シートなどの設置を依頼しましょう。これにより、埃の飛散を防ぐだけでなく、リビングでくつろぐ際も職人の視線を気にする必要がなくなります。
次に、非常にデリケートな「トイレ問題」についてです。職人が自宅のトイレを使用することに抵抗がある場合は、遠慮なくその旨を伝えてください。多くのリフォーム会社では、近隣の公衆トイレやコンビニエンスストアを利用するよう指導していたり、敷地に余裕があれば仮設トイレを設置したりといった対応が可能です。契約前の段階で「職人さんのトイレはどうなりますか?」と確認することは、配慮のある業者かどうかを見極める重要な判断材料になります。
そして忘れてはならないのが防犯対策です。工事中は資材の搬入などで玄関が開けっ放しになったり、キーボックスで鍵を共有したりするケースが発生します。貴重品は必ず金庫に入れるか、施錠できる別の部屋で厳重に管理し、絶対に工事エリアには置かないようにしてください。また、毎日の作業終了時には、担当者と一緒に窓や勝手口の施錠確認を行うことをおすすめします。「信用していないわけではないけれど、ルールとして」というスタンスで共有することで、お互いに気持ちよく工事を進めることができます。
最後に、休憩時間のお茶出しについても「不要」と割り切ることをおすすめします。かつては10時と15時にお茶を出す習慣がありましたが、現在では職人自身が飲み物を持参するのが一般的であり、施主様が気を遣って用意する必要はありません。あらかじめ担当者に「仕事などで対応できないため、お茶出しは控えさせていただきます」と伝えておくことで、無用な接触を減らし、ご自身のプライバシーと時間を守ることにつながります。
5. どのような場合に仮住まいが必要?住みながら工事ができる範囲と判断基準
リフォームを検討する際、費用の次に大きな悩みとなるのが「工事期間中の生活場所」です。引越し費用や短期賃貸の家賃を節約するために「住みながらリフォーム」を希望する方は多いですが、工事の内容や規模によっては、現実的に生活が破綻してしまうケースも少なくありません。ここでは、住みながら工事が可能な範囲と、仮住まいを検討すべき具体的な判断基準について解説します。
住みながら工事ができる範囲とは
基本的に、生活の拠点となるスペース(寝室やリビング)と、最低限のライフライン(トイレ、風呂、簡易的な調理スペース)が確保できる場合は、住みながらの工事が可能です。
* 設備機器の交換: トイレ、洗面台、ガスコンロの交換など、半日から1日で完了する工事。
* 部屋ごとの内装リフォーム: リビング、寝室、子供部屋などを順番に工事する場合。使えない部屋の荷物を別の部屋に移動させるスペースがあれば可能です。
* 外壁・屋根塗装: 室内の生活には直接影響がないため、基本的にはそのまま生活できます。ただし、塗料の臭いや窓が開けられないストレスは考慮する必要があります。
* 部分的な間取り変更: 一部の壁を取り払う程度であれば、養生を徹底することで対応可能な場合が多いです。
仮住まいが必要になるケース
一方で、生活の安全や健康、精神的な安定が脅かされる場合は、迷わず仮住まいを選択すべきです。特に以下のケースでは、一時的な転居を推奨します。
* フルリノベーション(スケルトンリフォーム): 建物の構造躯体のみを残して全て作り変える場合、物理的に住む場所がなくなります。
* 水回りの全交換と配管工事: キッチン、風呂、トイレが同時に数日間使用できなくなる場合、ホテルやウィークリーマンションの利用が必須となります。
* 大規模な床の張り替え: 家中の床を剥がすと足場がなくなり、家具の移動場所も確保できないため、居住は困難です。
* 断熱改修や耐震補強: 壁や天井、床を広範囲に解体する場合、大量の粉塵や騒音が発生するため、生活環境としては劣悪になります。
判断基準となる3つのポイント
「物理的に住めるか」だけでなく、「快適に過ごせるか」も重要な判断基準です。以下の3点をチェックして決断しましょう。
1. 家族構成とストレス耐性: 小さな赤ちゃん、受験生、在宅勤務の方、高齢者がいる場合、工事の騒音(ドリルの音や解体音)は想像以上のストレスになります。また、知らない職人が毎日家に出入りすることに抵抗がある場合も仮住まいが賢明です。ペットがいる家庭も、環境変化によるストレスや脱走のリスクを避けるために転居を選ぶケースが増えています。
2. ホコリとアレルギー: 徹底的に養生をしても、微細な粉塵は隙間から入り込みます。喘息やアレルギー体質の家族がいる場合は、健康被害を防ぐために現場から離れることをおすすめします。
3. 工期の長さ: 1週間程度の我慢なら耐えられても、1ヶ月以上続くキッチンなしの生活や、騒音の中での生活は精神的に疲弊します。工期が2週間を超える大規模な工事の場合は、コストがかかっても仮住まいをした方が、結果的に家族関係や心身の健康を守ることにつながります。
リフォーム業者と相談する際は、「住みながらできるか?」と聞くのではなく、「住みながら工事をした場合の具体的な生活シミュレーション(トイレは使えるか、洗濯機は回せるか、騒音レベルはどの程度か)」を確認してください。コスト削減と快適性のバランスを見極め、無理のない計画を立てることが成功の鍵です。

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